塩について(1)

[化学塩]・『天日塩』をイオン交換膜を通し、ほとんど塩化ナトリウムだけを取り出した純度の高い『精製塩』で『化学塩』と呼ばれるもの。食塩、並塩など

[配合化学塩] ・輸入した天日塩や岩塩を溶かし、苦汁や添加物を加えて釜で煮詰め、再結晶させた『配合化学塩』と呼ばれるもの。市販の『天然塩』表示にはこれが最も多いらしい

[天然塩] ・海水を原料にして太陽と風だけで水分を飛ばし結晶させたもの。本当に『天然塩』と呼んでいいもの。粗塩(あらじお)など

甘・酸・鹹・苦・辛…この五つの味を五味といいます。塩は「鹹」ですが、他のあらゆる味の基礎となります。菜食民族である日本人には、海のエッセンスとでもいうべきニガリをバランスよく含んだ自然塩が必要で、さまざまな食文化を育んできました。

中国前漢書「食貨志」の中に「塩は百肴の将、酒は百薬の長」という言葉があります。

前漢の皇帝を倒して新を建国した王莽が、治世に当たって宣言した言葉ですが、彼は「塩は百肴の将」を対句としてかかげ、民心をつかむために塩の特配を行ったということです。

特配といえばわが国でも春秋の二回、塩の賞与を出した時代がありました。身分制にうるさい平安時代の事だったので、階級に応じて加減をしました。皇子や皇女以上の威権を持ち「一の人」と呼ばれていた関白太政大臣の賞与が、なぜか少額だったそうです。いろいろと考えて「塩加減」したのでしょう。

塩が取れるのは世界でも限られていたので、貴重な交易品として重要視され、貨幣の代わりともなりました。マルコポーロは『東方見聞録』にチベットでは塩が少額貨幣として用いられていると書いています。

ローマ時代の兵士や役人の給料は塩でまかなわれていたとか。「給料」を意味するサラリーは、ラテン語のサラリウムに由来するもので、言葉の意味は「塩の支給」です。

ちょっと塩を加えたり減らしたりするだけで、料理も格段に美味しくなりますし、「塩梅」よいお味になります。西瓜や夏蜜柑に塩を少し振りかけると甘味が強くなり、林檎は食塩水に漬けると色が変わりません。すべてこれ、塩の特長である「対比作用」によるものです。小豆をにる時にに塩を少し入れると甘味が増す・・・味に深みがでます。

山国の武田信玄が塩不足で苦しんでいることを聞き、抗争中の上杉謙信が塩を贈った事から生まれたのが「敵に塩を贈る」という諺です。

手塩にかけるの「手塩」とは、食膳に添えられた少量の塩のこと。
手塩は、味加減を自分で調えるように置かれていたため、自ら面倒を見ることを「手塩に掛ける」と言うようになった。室町時代から「手塩」の語は見られ、元は膳の不浄を払うために小皿に盛って添えたものであった。
「手塩に掛ける」は、江戸時代から使われた例が見られる。

 

塩(NaCl)素材としての内容と、食品としての内容とは意味が一部異なる。

塩→海由来による塩→濃縮塩(縄文時代)→純粋に作った塩

                            →添加加工をおこなった塩

                           →人間の知恵と技術により加熱処理などを加えて加工した塩

      陸由来による塩(塩湖・岩塩)→組成物(岩)→変成塩色変化(組成変化)

化学名 塩化ナトリウム(NaCl)
ナトリウム(Na)と塩素(Cl)からできています
正六面体
(サイコロ形)
無色透明
(白く見えるのは光の乱反射のためです)
かたさ モース硬度2.0〜2.5
(方解石と同じくらいのかたさです)
比重 2.16
(同じ容積4℃の水の2.16倍の重さ)
融点 800℃
(800℃以上になると、とけて液体になります)
沸点 1400℃
(1400℃以上になると気体になります)
塩のかたちの変化
塩のかたちの変化

海水の成分

 

 

世界の塩の産地世界の主な製塩地

塩資源分布
塩湖・塩性湿地 塩湖・塩性湿地
地下岩塩層 地下岩塩層
天日製塩適地(海水) 天日製塩適地(海水)

 

 

製塩地(塩資源別)
塩湖・塩性湿地 塩湖・塩性湿地
岩塩・地下かん水 岩塩・地下かん水
天日製塩(海水) 天日製塩(海水)
イオン交換膜法(海水) イオン交換膜法(海水)

 

 

 

利用されている塩資源の割合

現在、世界中で1年間に約1億8000万トンの塩が生産されています。海水からつくられる塩は、そのうちの約1/4で、残りは、岩塩や塩湖など海水以外の塩資源から採られます。
利用されている塩資源の割合